黒留に変色が出ていたら貴重品かもしれません。[三度黒_後編]

変色する黒色があるということをご存知ですか?

 

塗装の剥がれなどは別として、家具や衣類などが色褪せて少し白けたり、薄くなったりしているのは見かけますが、変色って見たことありますか?

 

ちょっと考えてみてください。黒色って無彩色ですよね。赤色でも青色でも黄色でも、黒色と混ぜたら黒色にしかならない、全ての色を飲み込むのが黒色なんです。

その黒色が変色するとはどういうことでしょう…?

なんか不思議ではないですか?

 

でも、実はその ”黒が変色する”  という不思議が起きるのが三度黒なんです。

 

 

例えば、酸で変色します。(「酸てレモン!?」はい、それもですが、汗にも含まれます。)

オレンジ色っぽい変色が衿や脇、袖口などに出ていたら、汗からのものと思われます。

 

また、カビの浸蝕が進んだ場合も、黄色い変色になります。

 

黒色がオレンジ色や黄色になるって不思議ですよね。

江戸褄模様の衽に出た変色

 

また、色の段差というのもあります。

 

黒留袖の色の段差

経時変化により出現した色の段差

 

友禅染めで柄を置いてある三度黒の留袖の場合、柄付近の黒色は、染料の色、地色は三度黒ということになりますから、それぞれの経時変化(時が経つことで褪色や素材に変化が生じることを言います)の仕方や速度にズレが生じるため、初めは同じ黒色だった物に差異ができます。(これを色の段差と呼んでいます。)

 

他にも、たとう紙の型焼け、ハンガー焼け、手の皮脂焼けなどの事例もあります。

 

この三度黒の変色、正確にいうと色補正はできないんですよ…

何故なら、染料で染めているのではなく、ログウッド、ノアール、六価クロムという独特な染めで黒色にしているからです。(「染料で染めていない黒『三度黒』とは?[三度黒_前編]」をご覧ください)

染料で一時的に補正して、美しくご着用いただけますが、地色が褪色すると、そこに色の段差が生じて来ます。

それも場合によりけりですが。

 

私たちはお客様にそれをご理解いただいた上で、染料ではない物に染料で補正をするしかないわけですが、褪色したり、カビが出たりしないよう保管すれば大丈夫です。(しるくぱっくなどをご利用ください。)

 

ですから、しみぬきの薬品も比翼の一部などにしか使えません。

 

ーじゃあ、きれいにならないの? 

 

ーいいえ、そんなことはありません。

 

もちろん程度にもよりますし、柄場は工芸補正や金加工ほか、様々なお直しのやり方があります。比翼や胴裏は取り替えることもできます。

いよいよどうにもならなくなっても、鞄や額など、ほかの物に作り変えることだってできますから、諦める前にご相談くださいね。

 

何故なら実は、三度黒は現在ではほとんど作られておりません。

原料のログウッドは希少になって手に入りにくいそうです。重クロム酸を水洗するための設備や費用も莫大なため、現在では採算が合わない。それに危険を伴う重労働、技術を持った職人は、果たして継承されているのでしょうか。継続が困難な染色であることは明らかです。

 

ですから、三度黒は大変珍しい、染めの貴重品です。

もし、たんすの中に変色している黒い着物をみつけたら、先人が残して下さったかつての高級品です。

大切にしてくださいね。

 

見分けがつかない方や資料をお作りになりたい方は、弊社オリジナルのサービス、キモノカルテをご利用ください。

 

このような素晴らしい染めが量産されていたなんて、現代ではもはや想像がつきません。かつての職人さんのお話しなど、機会があれば聞いて見たいですね…

(併せて ”染料で染めていない黒「三度黒」とは?[三度黒_前編]”もお楽しみください。)

 

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