◆染色補正技能士という資格ー着物コラムー

 

染色補正技能士とは、しみぬきの唯一の国家検定資格です。しみぬきに資格試験があるんです。しかも国家資格(1級)です。「しみぬき」と言うと現代では、クリーニング屋さんの看板などでよく見かけますが、「クリーニング師」という資格とは少し違います。

 

・クリーニング師と染色補正士の違いは?

クリーニング師とは、公衆衛生の向上、衛生法規の知識が基準で、洗濯をする、つまり着た衣類等を清潔にすること。

 

それに対して染色補正士とは、元々、納品前の染織品を修正して更に完成度の高い染物にする、という所から始まっています。

 

その歴史は古く、約300年前江戸時代中期の享保14年、京都で天皇や公家の着用する礼服などの染織品を承っていた出入りの呉服商(当時は呉服師と呼ばれていたようです)が、染色上のシミを除去して完全な染物を献上する為に京都小川三条に住む新宮三右衛門をそのしみ抜き補正の専業に当たらせたのが、染色補正の始まりと言われています。当時は御手入れ師と呼ばれていました。

着物始末暦全10巻

ハルキ文庫、中島要著、着物始末暦全10巻
江戸時代、着物のしみぬきや仕立て替えなど何でもする始末屋「余一」が主人公の小説。面白くて勉強にもなります。

 

着物のお手入れという言葉はここから来ているのかも知れませんね。

(流派もいくつかあって、新宮家は途絶えていますが、幾久屋というその流派は現在も継承されています。しるくらんどでは創業以来、幾久屋流の先生にご指導頂いています。)

 

その後、今から約50年前の昭和46年、労働省より染色補正技能士という資格が認定されました。こちらも結構歴史がありますね。

 

試験は2級と1級があり、受験資格は、次の通りです。

・2級は実務経験2年以上

・1級は実務経験7年以上又は、2級取得後2年以上の実務経験

2級は紋抜き・4種のしみぬき・2種の柄の修復

1級は紋消し・はき合わせ・匹田消し且つ匹田描き の実技科目を制限時間内に行い、試験に用いた生地は何週間か置いて経時変化が出ないかを確認してから採点されます。また、学科試験も別の日に行われます。実技と学科の両方が合格しないと資格は取得できません。

紋を洗ったり、紋を抜いたりするのは、現在は紋屋さんがされている所も多くありますが、昔から補正士の仕事でもあったため、その部門は補正組合の管轄に属されていたそうです。そのため資格試験に紋抜きや紋消しが取り入れられているようです。

 

2級紋入れ

(2級紋抜きの練習)           

1級紋消し

(1級紋消しの練習                     

 紋を消しているのであまり見えませんが)

 

実務、実績を重視した厳しい受験資格なので、ここへ至る前に辞めてしまう人や、受験しても不合格になる人も多いので、狭き門と言われています。試験も2年又は3年置きにしか行われていないので、機会を逃してしまうと、又、期間が空いてしまうというタイミング的な事もあります。

 

しるくらんどでお手入れ業務を行う京都支社には、1級染色補正士・2級染色補正士・クリーニング師が在籍しております。顧問の先生から頂く御指導の他に、社内でも自主的に勉強会を行い、新しい知識や技術の習得に励んでいます。又、資格受験の際には会社がバックアップしてくれる制度もあるので積極的に受験にチャレンジできて、スキルアップの励みになります。

証書

 

着物も、しみぬきも、補正も、それぞれ奥が深い世界ですから、勉強すればするほど、自分の未熟さに気づかされて落ち込む時もありますが…

 

でもやっぱり私達はこの仕事が大好きです。ずっと続けていきたいな…

 

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