◆針も無いのに検針機に反応する着物 ー着物コラムー

検針機とは、衣類などの縫製の時に針などの危険物が混入していないか検査する金属探知機で、着物だけでなくアパレル他、様々な繊維の業種で使用されています。

 

子供の頃、おばあちゃんから「そげ(とげ)は歩かないけど、針は歩く。」と、針の危険さを教わりました。つまり、そげは刺さった所で止まっているけど、針は血の流れに乗って移動して行き、いつか心臓を刺すんだよ、と。子供心に空想を巡らせて怖い思いをしたものですが、なまじっか嘘でもないようです。

 

おばあちゃんが子供の頃にそのまたおばあちゃんから聞いたような昔の話では、赤ちゃんの頃、帯に入っていた針が刺さって大泣きし…気付かれないまま大人になり…太ももが痛いので病院に行ったらその時の針が出てきた…とか、 針に関する昔の逸話には驚かされます。

…どうして赤ちゃんの時の針だってわかったんでしょうね…?…聞き伝えるうちに話も変わりますから今となってはどこまで本当かわかりませんが(笑)

 

しるくらんどでは、縫製部門だけでなく、お手入れの方でも、毎回仕上げ前に検針機を通すのを習慣にしています。自然に半衿や帯揚げのような一枚布まで通しているのに気付いて苦笑する事もあるくらい、徹底して義務化しているので、長年やっているといろんな経験もしています。

 

検針機の写真

検針機が反応しないか確認しています。

 

プロの仕立て屋さんでは針には細心の注意を払って、チェックも何度もされていますのでご安心下さい。ですが着物は、検針機のないご自宅で、縫われたり縫い直しをされたり、又、着付けの際には安全ピンを使われてそのままになったり、そういった物が出てくる事はたまにあります。特に昔は各家庭で縫われたので、古い着物に多いです。ホチキスの針が出てくる事もありますよ。3年に1回くらいですけどね。

でも。着物の場合、何も入ってないのに検針機が反応する事があるんです。実は結構あって、珍しくないくらいなんですよ。今回はそんな雑学です。

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検針機にも種類があって、どんな仕組みでどの金属に反応するように作られているかによっても違いますが、 弊社で使用しているのは昔からある、たぶん業界でもよく使われている磁力を利用したタイプの物です。

ですから簡単に言うと、磁石にくっつく金属が含まれていれば反応します。それを磁性体、と言います。鉄分、ニッケルなどですね。金銀銅、アルミ、真鍮など、磁石にくっつかない物には反応しません。針を見つけるのが目的なので、何でも反応するとかえってややこしくなりますよね。でも、鉄分やニッケルなどは、土や石などの天然鉱物にも含まれていますから、それを染色や彩色に使われている着物には反応する、というわけです。

ですから例えば、その含有率の高い一部の墨や顔料、泥染めなどもそうです。家紋・柄の中の一つの色・金彩や金糸に反応する事もあります。また、大島紬も鉄分の含有量の多い泥を使われていると反応します。

 

顔料の写真

胡粉(岩絵の具)で試してみたところ、上段の顔料は反応しませんでしたが、下段の顔料は反応しました。

紋の写真

家紋はイメージ写真です。

 

他には、衿につけられているスナップも素材によっては反応しますし、導電性繊維と言って、静電気を防ぐためのものが裾に織り込まれていて、そういった物に反応した事もあったようです。

 

私達は長年の経験から、検針機の鳴り方や鳴る場所で、これは針かも⁉️と疑いがある時は、ほどいてでも徹底的に探して、完全に鳴らなくなるまで発掘し、検針には神経を尖らせています。お手入れした着物から針が出てくる事は年間に数回ですが、毎年あります。古着屋さんで買われたり、何十年も着ていない着物を頂かれたりした時は、まずリファイナリーを御依頼下さい。綺麗になるだけでなく検針も致しますから、より安心です。

それにしるくらんどオリジナルサービスのキモノカルテも無料でお作り致します。

Webからキモノカルテ希望とご注文下さいね。

 

 

 

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