♢色移りはとれないこともあるので、出来るだけ防ぎましょう ー 着物生活 ―

色移り(移染)には、様々な条件・様々な種類の物があります。例えば、ご家庭のお洗濯で、ジーパンなどの色が白いTシャツに移ってしまったり。帯やショルダーバッグのヒモ、腰ひもやベルトのように強い摩擦で擦れた時に色が移ってしまったり。汗や熱いお湯、又は水をこぼして下の衣類に色が移ってしまったり…ご経験はございませんか? 大切なお気に入りだと泣きたくなりますよね。

また、口紅やカレーなど、色素の強い物がついて、染着したものも移染の部類に含まれるかも知れませんが、今回は

「染色品から染色品への色移り」

に、的を絞ってお話します。注意点を参考にして、防ぎましょう。

絽の胴裏に移った赤色

絽の胴裏に移った赤色

ーーー 色が移るという事は、色が落ちている という事 ーーー

 

大抵の場合は、色が落ちないよう染料が定着しているので移染は起きないのです。(染色品の色落ちや退色性は、堅牢度試験で判断されます。)でもたまたま何かの染色品の色が落ちてしまうから、同時に使用していた物に移ってしまうのですね。では、どうして落ちてしまうのでしょうか。そこには、

 

① 摩擦  ② 熱  ③ 水・湿気  そして、④ 染着座席以上に染料が乗っている→つまり、「濃過ぎる」

この四つの原因が大きく関わってきます。

 

染色品から染色品への色移りに必ず言える事は、

「濃い色が薄い色の方へ移る」事でその逆はまずありません。それは被染物には必ず「染着座席」があるからです。染着座席については、藍染めの浴衣や着物の色移りについて書いたブログ(☆藍染めの 浴衣の洗濯や着物の色移りー着物雑学ー)で詳しくお話したように、被染物には染料が定着する場所があって、その数は繊維によって違います。例えば天然繊維・絹の場合、精練の仕方によっても変わります。

例えばお洗濯の時にも、厚手の布は水をよく吸って(吸水性)なかなか乾きませんが、薄い布はあまり水を吸わずすぐ乾きます。それと似ていて、この場合厚手の布の方がたくさんの染料水が必要、即ち染着座席が多いという事になります。

 

そんな風に染料と生地にはそれぞれの相性があります。染料を定着させる方法も染め方によって様々ですが、困難で無理のある染色をすると定着が甘くなることもあります。濃い色は染料を多く使用していますから、濃い色が落ちやすいのはそのためです。

帯に移った黒色

帯に移った黒色

ですから、この四つのポイントを知っておけば、色移りはかなり防げます。例えば

① 摩擦  こすれる所

摩擦による色移り

摩擦による色移り

 

② 熱   温度が上がる所

熱による色移り

熱による色移り

 

③ 水・湿気  汗をかく所

熱による色移り

水による色移り

 

④ 濃い色  濃い色と薄い色を同時に使う時は注意する。長い年月、引き出しの中でくっつけて置いてるだけで色が移ることも。

濃い色地は定員オーバーにより、色落ち、即ち色移りしやすい

長期間の保管時に柄から色移りした着物(赤色)

長期間の保管時に柄から色移り(赤色)した着物

でも、帯やヒモなど、汗と共に擦れてしまう所は、摩擦と熱と湿気が同時発生するので、特にヒモはなるべく白などの薄い色の物がオススメです。そして移ってしまった時には、しみぬきのプロのいる専門店にご相談されるのが最善策です。

 しかし、

ーーーとれにくい・とれない色、というのも中にはありますーーー

 

移った方に金彩があったり、先染めだったり、場合により薬品や水が使えない事もありますし、使えたとしてもとりきれない事もあるんです。特に残りやすいのは、ローダミン(蛍光ピンク)オーラミン(蛍光イエロー)などの塩基性染料です。例えば、赤い色が移った時などその色の中に含まれているローダミンだけがとれずに残る事もよくあります。

ローダミン(染料)の移染した半幅帯

ローダミン(染料)の移染した半幅帯

移染を柄を置くことで目立たなくした半幅帯

移染を、柄を置くことで目立たなくしました

 

ですから、色移りは出来るだけ防ぎたい所なんですね。

ちなみに塩基性染料は食品や口紅などにも含まれていることもありますので、ご注意ください。ガード加工をしておくと安心です。

ローダミン、オーラミン

色移りのしくみや注意点、少しお分かり頂けたでしょうか?大切なお着物を長く保つために、ご参考にして頂けましたら幸せです。そしてもし色移りがあったら、さわらずに、あきらめずに、ご相談くださいね。