着物は一反すべて使って作ります

洋服を作るときは、アイテムによって使用する生地の分量が異なるので型紙を使って必要な分だけ生地を切り出します。ミニスカートなら少し、ロングスカートならたくさん必要ですし、小柄な人より背の高い人の方が生地をたくさん必要ですね。

 

でも着物は違います。

羽織用 < 着物用 < 振袖用のように各アイテムに必要な生地の長さで反物が作られており、基本的に一反すべて使って一着を仕立てます。着る人のサイズに関係なく一反すべて使います。

 

もちろん着物用の反物(着尺12.5m位)で羽織を仕立てて残った生地でかばんなどを作ることもあります。逆に羽織用の反物(羽尺7m~10.2m)で着物を仕立てようと思ったら生地が足りず、同じものが2反必要になります。

小柄な方でもサイズに合わせて短く切ってしまうのではなく、内側に入れ込んで仕立てます。

 

そして反物は、着物なら身頃、衽、袖、衿に裁断し、必要最低限の位置だけにはさみを入れて仕立てます。アイテムにより例外もありますが、ほとんどの場合は繊維に沿って直線に裁断するので捨てる部分は出ません。そのため、ほどいてつなぎ合わせれば、再び仕立てる前の一反の反物のように戻すことができます。

反物裁断図

着物の反物の裁断イメージ図 ~8つのパーツに切り分けます

 

昔から生地は貴重なもので大切に使われてきました。

おのおのの家庭でお母さんが家族の衣服などを作るのが当たり前のことでしたので、生地を無駄なく繰り回すことも主婦の知恵でした。ですから、ほころびは直し、子供の着物や寝巻き、前掛け、座布団など、小さいものに作り変え最後には雑巾にして本当にその生地がなくなるまで使い切ったようです。

着物の構造には、そういった昔からの考えが反映されているのでしょうね。

 

着物は作るときから必要な分だけ織って、捨てることなく、かつ、再利用もできる形に仕立て、無駄なく使い切ることができる衣服なのですね。

解き端縫いアップ

解き端縫い

そのようなことからも本来、着物を水で洗う場合には、ほどいてつなぐ「解き端縫い」という工程のあと、「洗い張り」という作業をします。

 

反物に戻るという特徴には、こんなメリットがあります。

 

  • もう一度、染め変えることができます
  • 擦り切れや取れないシミや変色がある所は、見えない部分に回して綺麗な生地の部分と交換することができます。(繰り回し、天地替え)
  • 先染めの紬など表と裏の区別がほとんどない生地は、汚れにくい右側の下になる身頃(下前)を上になる左側の身頃(上前)と入れ替えることも可能です。(これも繰り回しと言います)
  • 縫い代や内揚げに生地が片付けられているので、サイズを変えることができます。それでも足りない場合には別の布を見えないところに足し布することもできます。
  • 使える部分の生地で着物が作れない場合には、羽織など別のものに仕立て直すこともできます。
解き端縫した反物イメージ図

解き端縫した反物イメージ図

 

補正士が登場したのは約300年前。シミや変色を直して着られるようにする専門職も活躍してきました。

しかし、こうしてしみぬきや補正ができないものでも再生できるように、着物は作られてきたのです。(例外的にできない場合もありますが)

 

ファストファッションがあふれている現代の日本では考えられないかもしれませんが、着物で生活していた頃までは、特に庶民はこうした方法で一枚の着物を大事に大事に着ていたのではないでしょうか。

ですから、シミや変色が直せない生地(「先染め・後染めのしみぬき(後編)」)であったとしてもあきらめないでくださいね。

 

しるくらんど本社に縫製工場があり、お仕立てはもちろんお直しも自社でできますので、あらゆるお直しをご提案させていただきます。伝えにくい着物のご相談もリモートならコミュニケーションも取りやすく、ご安心いただけると思います。相談は無料ですので、お気軽にお申込みください。

着るにはどうしても難しい素材であっても、帯やかばんなど別のものに作り変えるリメイクもご相談いただけます。

 

そう、このようなリメイクも繰り回しと言うこともあるみたいですね。

ちなみに金銭のやりくりを繰り回しと言いますが、着物の繰り回しもお母さんの家計のやりくりだったのかもしれませんね。日本の言葉って味わいがあっていいですね。

 

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