★きものの色を変えたい!染め替えの利点と注意点―着物クリーニング―

 

 

着物には先染めと後染めがあって、どちらについてもこれまでのブログで少しお話しましたね。今回は染め替えのお話ですから、ブログ☆きものの後染めとは?絹の白生地の染色のいろはの「い」 ―着物雑学―もぜひご参照下さいね。

 

さて、染め替えですが、基本的に生地さえ丈夫ならば、先染めも後染めも上から色をかける染め方(目引き染め)は可能です。絹は上等で貴重な生地ですから、とれないたくさんのシミや、全体の褪色、色が派手、などの理由で着られないのはもったいない。そんな時には染め替えを希望される方もおられます。

 

私の着物もできるのかしら?想像した通りになるのかしら?

 

興味はあっても初めての時は不安ですよね。できるだけわかりやすく説明させて頂きますね。

 

目次

  1. 染め替えに必要な工程
  2. 染め替え出来ないもの
  3. 不可能な色
  4. 染め方
  5. その他の注意点
  6. まとめ 染め替えで見事に甦る着物

 

 

① 染め以外に必要な工程・洗い張り又は解き端縫い、そして再仕立て

 

着物は一旦解いて反物に戻し、水を使って洗い張りするという下準備が一般的です。

その着物の状態によっては、溶剤で洗い張りをしたり、解くだけの場合もあるし、しみぬきをする場合もあります。(稀に解かずに着物のまま染める所もあるようですが、リスクも高くなるので、ほとんどのお店で解いて染める方式をお勧めされます。)染め上がったら再びお望みの寸法にお仕立て致します。胴裏や八掛も取り換えれば新品同様に甦る事もよくありますよ。染め以外には、これらの費用が掛かってきます。(✻反物の場合は別の方法が用いられます)

 

 

② 染め替え出来ないもの

 

むらなく染めるため、しごき染めで染める事が一番多いですが、引染めや浸染で染める事もあります。どの染め方でも、水洗と高温の熱が必要ですから、それらに耐えられない物は染め替え出来ません。

しごき染めの水洗の様子

 

具体的に言うと、生地が弱っているもの、金駒や刺繍のある物、金銀箔、螺鈿やビーズなど装飾のある物、顔料や色が泣き出る物、といった所でしょうか。

また、金糸やポリエステルなどの化繊糸は染まりません。

 

 

③ 不可能な色

 

基本的に白生地ではないので、物によって色の限界は変わってきます。

・ 濃色を薄色にすることは出来ない

脱色(別料金)して染めれば出来ると思われがちですが、それは最後の手段。生地も痩せるし、脱色しても白にはならず残る色がそれぞれありますし、出来る色も限られてきます。ムラも出やすくなるなどリスクが高いためお勧めはしません。また同様に、黒地を黒以外の色には替えられません。

・ 青味の強い青や薄い水色

絹は本来、白ではなくうっすら黄色かったり、茶色がかっていたりするので、反対色である青系の色は出来ない色もあります。但し元々の色が青色系で褪色していなかったり、紺や藍や納戸など、濃い色目や少し黄色がかった色目ならば出来る事もあります。

色相環

・ 鮮やかな色

白生地ではないので、鮮やか色は出来ない場合もあります。

 

色は一番気になる所です。色の見え方も個人差はありますが、小さい色見本で見るのと大きな生地で見るのとでは違って見えたりもしますし、ピッタリこの色にしてほしいという伝え方はされない方が無難かと存じます。

色見本で伝えるとしたら、「ブレるなら赤い方にブレて、黒い方にはブレないで」という風に好みではない方向を伝えたり、「この羽織りと帯に合うように」とコーデや普段の洋服センスを見せるのも、色背(いろせ)を伝えるのに効果的です。

その上で、ある程度は許容範囲だと心得ておいて下さい。

色に詳しい方でしたら、「この色を掛けて下さい」と指示される方もおられます。例えば、青い生地を緑にする想定で、掛ける黄色を選ばれる場合です。この場合、「出来上がりの色ではない」という事を間違いの無いよう伝えましょう。どうしても気になる場合は、染める前に端末に色を少しつけて、お見せする事も出来ます。

 

 

④ 染め方

 

・ 目引き染め…上から一色を全体に染める

  柄の上から染める場合と、柄を変えないため糊伏せする場合があり、伏せる場合は別途費用がかかります。

・ 巻きぼかし(柄よけ)

  友禅の周りは元の地色をぼかして残し、無地の部分を主に染めます。

・ 小紋染め

  細かい変色が全体にある場合など、鮫小紋などの小紋型でしごき染めするのが効果的です。

・ 脱色して染め替え

  全体に変色があったり、元の地色が大変濃い色であるなど、やむを得ず脱色する事もあります。

 

 

⑤ その他の注意点

 

 しみがあるので染め替えを希望される場合は、しみぬきをしないといけない事もあります(料金は程度次第)。また出来ない色や、小紋型を使った方が良い場合もありますから、担当の方とよく相談しましょう。染めてからしみを補正する場合もあります。しみぬきをしてもしなくても、しみの所は浸透圧が高くなっているので色溜まりになることもよくあります。軽いしみでしたらそのまま問題なく染められる場合もありますし、色にもよります。

 

 

⑥ まとめ 染め替えで見事に甦る着物

 

・柄のデザインは好きだけど色が子供っぽい小紋を大人可愛い色に

生地

パソコン上で赤地の生地に薄緑を足した例

・全体に色褪せた着物に同じ色の共濃い(濃いめ。共うすは、薄め)を掛けて元の状態に近く復元

・若い頃の着物を今の年齢で着こなせるように色替え

・カビの細かい黄色い変色がたくさん出ているのをカビ落としと同時に隠せる色替え

 

などなど、成功例はたくさんあります。そう言えばたんすに…と、思い出されたその着物、取り出して携帯で写真を撮ってみましょう。携帯の編集アプリなどで色を変えた雰囲気を見る事も出来ますから、便利な時代になりましたね。

[以下パソコン上でピンク地の着物に左半分、緑(上)・青(下)を足した例]

染め替え例1

染め替え例2

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